邯鄲の島遥かなり(中)貫井徳郎

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邯鄲の島遥かなり(上)貫井徳郎 | お茶の間 (ochadouzo-yukkurishitettene.com)

あらすじ

神生島に福をもたらしたイチマツの子孫はその血を繋げ、生きていく。

大正から昭和になり、全ての成人男性が選挙権をもてるようになった。

一橋産業を興した一橋平太がこの世を去り、長男の直人に代替わりとなった。

神生島は心中の名地となりくがから多くの人間が訪れるようになった。

学問が発展しあらゆる超常現象は解明されていくが、一ノ屋の血がおこす「力」は果たして科学なのか、神の力なのか。

戦争が悪化し、島の若者も招集されるようになった。成人男性だけでは足りず、未成年や学生も出陣を余儀なくされた。島には爆撃が落ちた。この島に生まれたいのちが、世界中で散っていった。

戦争は終わった。

感想(ネタばれあり)

来るなあ、と覚悟はしていたけど、辛い。どんな作品、表現であっても戦争に関するものは辛い。単純な見方しか出来なくて情けないけれど、「天切り松」※でも言っていたが当時の政府にちゃんと力を持った女性がいれば、日本だけじゃなく世界中のトップ集団の中の性別が男女半々であったなら、戦争は起きなかったと思う。(この辺いろいろ語ると変な見方されそうだからほどほどにする…)

(上)に比べて、ラストに少々ゾクっとする話が多くなった。いままではまっすぐに始まりまっすぐに終わるという感じで、ラストひっくり返るんでしょ?という期待に反し見事なまでにまっすぐな話が多かったので、油断していた。なんというかウソとか、人を犠牲に出来る人間が出てくるはずないな~と思いこんでいたので、他の小説の中ではこんなこと小さな出来ごとに過ぎないのに、この作品に出てくると小さな悪意がとんでもなく大きく見えてしまう。こりゃあ(下)も油断できぬ。

この戦争で、イチマツの血を継いだ者たちはほとんどいなくなってしまったはず。残った者が一ノ屋を、神生島を再建するのか。その先の時代に、一ノ屋という存在が必要になってくるのか。どのような道を歩むのか、残り一冊、大事に読みたいと思う。

※天切り松…浅田次郎著の「天切り松闇がたり」シリーズ

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