あらすじ
これまで利き手を務めていたおちかが嫁に行き、新たな利き手となったのは三島屋の次男・富次郎。自由きままな次男坊だが生来が素直で生真面目な性分。おもしろ半分では務められないと気を引き締めていたところ、富次郎の百物語のはじめの語り手は幼友達であった。
子供は大人が思う以上によく見、覚えているものである。幼い八太郎の幸せを、お花の幸せを壊した「もの」とは、一体なんだったのか。
三島屋変調百物語第二章のはじまり。
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あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続 宮部みゆき | お茶の間 (ochadouzo-yukkurishitettene.com)
感想(ネタばれあり)
富次郎の素直さが非常に好ましい。年下のおちかを尊敬するだけではなく、奢らず、自分にはなにができるだろうとしっかりと考えている。そして周りの手や知恵も迷わず借りていく。自分の興味よりも相手への配慮。おちかも心優しい娘であったし、富次郎はそこに「ひょうきんさ」が加わって、良い語り手にバトンタッチできて良かったなあと思う。
今巻は富次郎の門出?だというのに、なんとも、苦しい話が続いたもんだ。はじめの語り手が幼馴染だったことは気持ちを楽にさせただろうが、友達にそんな悲しい過去があったなんて知らなかったと、富次郎も辛いだろう。何もしていない善良な人間が妖か何かの手に堕ちてその生を終えることほど悲しいものはないよ……今回は特にそういう話が多かった。
おちかがいなくなって、少し華やかさに欠けたのは正直ある。おちかは折々に着物を考えて変えていたし(宮部さんのこういうとことても好き)普段は落ち着いた着物が多いが、花見やお呼ばれの際には化粧を整えいつもより華やかな柄の着物にして、とか、そんなところが物語に華を咲かせてたから、おしゃれするかわいこちゃんたちにまた出てきてほしいなと思うわけです。でもその「華」が富次郎にとって食べ物なのかも!?
わたしは黒白の間でのお茶やお菓子をいただくシーンが好き。熱いお茶を飲んだ時と、少し冷ましたお茶を飲んだ時、語り手もそのときは落ち着くのだが、読んでるこっちも少し息が吐ける。張り詰めた気持ちのお客様がおいしいお茶とお菓子をくちにしたとき、ほっとしてくれるのが嬉しい。大丈夫だよ、ゆっくり聞かせてね、という優しい時間になる。今日はなんのお菓子かな、なんてわたしまで楽しみにしちゃってる。
悲しい話が多かったので、次の巻では富次郎のこころを安らげる百物語があるといいな。
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