桜ほうさら(上・下)宮部みゆき

読書感想

あらすじ

賄賂を受け取ったという身に覚えのない罪で切腹し果てた父の汚名を晴らすため、古橋笙之介は江戸にやってきた。家族もいない、友人もいない、知り合いなどひとりもいない笙之介だったが、同じ富勘長屋に住まう、おせっかいであたたかでちょっとぬけている住人たちに支えられ、なんとか今日も暮らしている。ある日、部屋から見える桜の木の下で美しい桜の精に出会う。あれは夢か幻か?写本作りの仕事を回してくれる貸本屋・村田屋治兵衛に問うが知らぬという。しかし笙之介は桜の精ー和香という少女と現に出会うことになり、和香や治兵衛や長屋の皆と数々の「書」にまつわる事件を解決していく。その果てに、自身の目的が近づいていることは、いまはまだ知らないー。

感想(ネタばれなし)

桜の咲くこの季節にタイムリーな作品だった。

わたし「きたきた」から読んだんだけど、出来たら「きたきた捕物帖」から読んでほしい!まあどっちでもいいんだけど、登場人物がリンクしていて、「きたきた」から覘く「桜~」のネタが、そういうことかーー!なるほど!ってなったので。

寄り道がたくさんあって、あれ?目的ってどうなったんだっけ?と思ったけれど、ちゃんとつながっているのは(当然だが…)さすが宮部先生~。

かわいい挿絵と明るく楽しい登場人物、読みやすい文章だけれど、しっかりと、時に惨いほど人間の悲しさ愚かしさが出てくる。「家族だから」「女性なのに」「良いひとだと思っていたのに」誰もが無意識のうちに決めつけているものがある。見えるものしか見えないのだから当然である。自分に対してもそう。自分はこう、と思っているものしかたいていは見えない。けれど自分でも気づかないものを表しているものがある…それが書だった。書を愛し書に生かされた笙之介だから解決できたんだね。

感想(ネタばれ)

いちばんムカつくの、母の里江なのだが!?そして里江を擁護する東谷もだ!!笙之介を駒としていたのはしょうがない。それが役目であるから。里江も、自身の親に恵まれなかったのかな………なんて知るかい!!!恵まれないなら自分の子はそうならないようにしろ!!というか笙之介の父に迎え入れられたことをなぜ感謝しない…こんにゃろ。。東谷は里江を愛しいとか言っている時点で同罪。嫌い。梨枝さんにも近づかないで。勝之助が歪んでしまったのもみんな里江のせい。己の犯した罪、こういうひとは絶対に自覚できないんだよね…かわいそうなひと。

最後、まさか笙さんが死ぬなんてことはない…よね?でもでも…みたいな感じだったから非常に安どした。和香とはどうやってこの先生きていくのかしら。まあ、頭の良い治兵衛や勘右衛門らがいるし大丈夫か!彼ら金も人脈もあるしね!梨枝さんも東谷より笙さんの味方しそうだしね。きっと、体がすっかり癒えたころに、和香とふたりで三八野にも行くんだろうな。書物だけでなく、今度は自分の目で飢饉のことをしっかりと受け止め、世に出していくのかな…なんて思いました。

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