邯鄲の島遥かなり(上)貫井徳郎

読書感想

あらすじ

イチマツが帰ってきた。

本土より離れ、海に囲まれたなにもないこの島に帰ってきた。

新吉はたった5年しか生きていないが、自分の知る、この世の誰よりも美しい人間がイチマツだと思った。いや、知らない人間を含めてもイチマツが最も美しい人間だと思った。それはきっと自分の思い込みではないことも知っていた。イチマツは美しい。この島の老いも若きもすべての女がイチマツの虜になった。

一ノ屋の家に生まれたイチマツは、己の運命と役割を知っていた。だから島の多くの女を受け入れ、己の種を残した。しかし誰とも家族にはならなかった。種はたくさん残した。

イチマツは去った。己の役割を終えたと思ったのか、新たな役割を見つけたのかは分からない。

イチマツはもうこの島にいない。

だけどイチマツの残した種は生まれ、育ち、生きていった。今日もまた、イチマツの子孫が生まれる。

感想(ネタばれなし)

めちゃめちゃ裏切られた…棚に分厚い本が上中下と並んでて、タイトルと表紙を見た瞬間どんな内容か調べもせず絶対すきなやつ、と借りたんだけど、想像と全然違った。えっと、次は?もしかして次は?そろそろ次は?と思っても全然予想してたものがこない。そんな感じでこの分厚さなのにあっという間に読み切ってしまった…まじで?こういう感じなの中も下も!?最高&最低!!

読んでて全然疲れないの、すごい。貫井さんの作品初めて読んだんだけどこんな感じで書くの?すごい読みやすい文章。人の描写もそこにふつう書くであろう思うであろうことがほとんど書かれてなくて、これが本当なら貫井さんて赤ちゃんのように純粋で100歳くらいの人生生きぬいた人だなと思った。

イチマツのイメージ、わたしの中では8代目市川染五郎さんです。「美しさ」で言ったらわたしの中では芸能界随一のおとこのひと。実写化するならぜひもう少し大人になった染五郎さんでお願いしたい。

感想(ネタばれあり)

いや完全に、呪い!!!宗教!!!異文化!!!閉鎖的!!!血の鎖!!!みたいなのを想像していたので(そういうのが好き)むしろ現実よりももっとまっすぐでまともな人たちのお話で…いやほんとに裏切られたね。

そんでそんなまっすぐでまともな人間のおはなしが淡々と続くんだけど、これが飽きないの。なにそれ。貫井マジック?

わたしなんかはもう性格悪いばばあ全開になっちゃいそうな人生を送っているのに、そんな性格悪いひと、ひとりも出てこない。まっすぐなの。優しいの。そんでびっくり仰天!大逆転な展開にも全くならない。ふつうこのままじゃ終わらないでしょ~って思ってるのに、そのままふつうに終わる。なにそれ。めちゃくちゃ面白いんだけど。だって物語のはじまりであるイチマツのキャラもふつうなんだもん。見た目もやったことも普通じゃないのに、考え方も生き方も普通なんだよ。なにそれ!?

ただ自分がどこかふつうじゃなくなる展開があるんじゃないかと期待しちゃってるので、上は面白いと思う感情で終われたけど残りの中と下は飽きそうで心配。貫井せんせい、裏切ってください!!!

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