革命前夜 須賀しのぶ(再読)

読書感想

あらすじ

1989年11月9日、ベルリンの壁が崩された。

長きに渡ってこの国、ドイツでは人々の自由と尊厳が奪われ続けていた。ただ、家族と抱擁したい。ただ、友と語り合いたい。恋人と自由に出かけたい。他の都市に出かけたい。欲しいものを買いに行きたい。なりたいものになりたい。勉強したい。言いたいことを言いたい。自分が自分でいたいのに。

ベルリンの壁崩壊の年の始め。日本では昭和天皇が崩御し、平成になったその瞬間、日本からのピアノ専攻である音楽留学生の眞山柊史は東ベルリンにいた。舗装されていない道路をひた走り、これから訪れる素晴らしい音の日々に期待を膨らませていた。しかし彼のこれから住まうドレスデンは未だ戦争の記憶が新しく、空は灰色に覆われていた。

ある出来事により、眞山は自分の「音」を見失う。この国で音楽で生きるものすべてに、眞山は屈服する。ありとあらゆるものが自由であった日本で暮らしてきた眞山とは異なり、ハンガリー出身のラカトシュ、北朝鮮出身の李やベトナム出身のニェット、そしてここ東ドイツで生まれたクリスタ、イェンツは「生きるために」覚悟を持ってここにいた。そんな彼らの音に比べて自分の音は無でしかなかった。

やがて眞山はこの国で出会う人々を通し、日本人の自分だからこそ出来ることを、自由を求める彼らに協力する。そして自由である日本で育ったからこその自分の「音」を見つけ出していく。

感想(ネタばれなし)

再読なんだけど、わたしの小さな小さな脳みそはやはり内容をきちんと覚えていなくて、ただとにかく読んでよかったと心から思ったこと、舗装されていない広い道路がどこまでも続いていく風景だけは覚えていた。だから再び読んだ今回、新鮮にラストにハラハラしたし驚いたし、やっぱり読んでよかったと思った。

突然だが、わたしの学生時代の夢は「外交官」だった。なれないと分かったあとの夢である。

昔から海外に興味があり、何度か実際にいろんな国に行った。そんな中自分が「外国人」だと意識させられたのは、イギリス留学時(当時15歳)に、ほかの国の学生に「日本人だからテニスコートは使わせない」とはっきり言われたことだった。

当時はその差別をうまく受け止められなくて意地悪な子がいた…という思い出だったのだけど、年々そう言われる立場のこと、言った子の国のこと、いろんなことを考えるきっかけになった。そして実際にその国を見なければわからないこと、伝えられないことはいくらでもあると改めて思った。だから外交官になっていろんな国を知り、伝えたいと思った。

もちろん海外のことだけではないのだが、わたしは常々「知らなければいけない」という気持ちに駆られる。他人に強制する気持ちは全くなく、ただ自分が知らなければ、覚えていなければと思ってしまうのだ。内容忘れてたくせにという反省とつっこみは自分自身に100万回しているので許してほしい…だからこそこういった内容の小説を定期的に読むことは、わたしにとって、なんというかめちゃくちゃ大げさに言えば「使命」のような気持ちにもなるのだ。

ベルリン崩壊といえばたった34年前である。そのころの日本は、海外にも自由に行けるし、だれと何を話しても罪に問われることはない。え、そんなの当たり前でしょ?罪になるの?なぜ?と、きっとその当時の日本人も思っていたはずだ。(なかなか当時のリアルな感情を聞ける人が周りにいないのが残念…親に聞いてみようかな)同じ地球にあって全く違う価値観や政治のもと暮らしている国があるのが、わたしはどんなに勉強しても理解が追い付かない。

余談すぎるがわたしはジャニーズのグループ「SexyZone」が好きなのだが、昨年末グループを卒業したマリウスくんはドイツの生まれである。彼は20代前半であるので、当然ながらドイツが諸々落ち着いたあと生まれたのだが、家族や周りからきっとたくさんの自国の歴史を耳に、目にしてきたであろう。それらを聞いたとき、感受性豊かで勤勉な彼の悲しみや苦しみはどれほどだっただろう。また同時にここまで美しく復活した自国を誇りにも思っているだろう。彼が卒業し新たな道に進むと決めたとき、本当に勝手な考えだが、そういう道を進むだろうと納得した。全く関係ないかもしれないけど。でもやはり、大きな出来事のくくりとしては戦後80年近くたった日本と34年のドイツでは国民の自国に対する思いの違いはあるだろうと思った。

終始、「信じられない」「なぜ」という悔しい思いでこの本を読み切った。そして戦い続けた彼らに心からの抱擁を。その昔トランジットで数時間降り立ったドイツではおいしいビールとソーセージを味わったのみだった。再び行く機会があれば、ベルリンの壁をはじめ行きたい…いや行くべきところがたくさんある。そのとき、また再びこの本を手にしてから行きたいと思う。

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